贈って表現するもの
コスメを扱ううちの店に、珍しいお客様が来店した。少しお年を召した男性だ。
おそらく60代 化粧品に興味がありそうな風でもなく、いかにも紳士という感じで珍しいはずなのに店内で浮く事はなく馴染んでいる。
見てると何かを探しているようだったので、声を掛けてみた。するとその男性は、奥様へのプレゼントを買いに来たらしい。しかし来てみたものの、どれを買ったら良いのか分らなくて悩んでるという事だった。
照れくさそうに笑う笑顔に、ほっこりとした気分になる。そういう事でしたらと更に話を伺い、奥様に合う60代 化粧品を見繕ってあげる。
目の前に出されたそれを真剣に見つめる姿に思わず笑みがこぼれる。少し興味を持ちもっと話を聞きたくなったので、説明の最中にこちらからも質問を投げかけてみる。
どうして60代 化粧品を贈り物に?と聞いたところ、「年を取ってもちゃんと女性として見てるよ」という気持ちを表現するのに、良いと思ったという事だった。
外見だけでなく、中身まで紳士。帰り際も購入した60代 化粧品を嬉しそうに抱えて何度もこちらにお辞儀をしてた。この仕事をしていて一番嬉しかった出来事かもしれない。